キクチ文具
発刊に寄せて
         菊地節子


  華やかな七夕飾りが風に揺れ、行き交う人々の頬を撫でていきます。 夏、真っ只中の8月6日から三日間にかけて開催される仙台七夕祭り。杜(もり)の都は、まるで蒼空を覆うようにして、限りなく美しい彩りの海と化します。
  藩政時代から脈々と受け継がれてきた仙台七夕祭りは、市民の祭りへの深い想いが町ぐるみの競演となって伝統を守り、今では、日本全国にその名を知られるようになりました。
  織女星と彦星のロマンにあふれた星の伝説から生まれた七夕。もともとは、各家庭で軒先に飾って願いごとを託すというのがはじまりでした。時代の移り変わりは、飾り付けも創意工夫のなか、年々、豪華さを増してきましたが、今でも昔ながらの手作りによる飾り付けを行っている商店街もそこかしこに見られ、素朴なあたたかさが伝わってくるようで、うれしくて思わず見入ってしまいます。

 
  七夕祭りは、全市を挙げて参加してほしい−これが私の願望であり、夢でした。長年にわたって、子供会や学校などで七夕教室を開き、七夕の由来や伝説を話し、飾りの作り方を指導してきたのも、そのような考えが根底にあったからでした。
  七夕飾りを家族で作ることは、心をふれあわすコミュニケーションの場ともなります。親と子、孫とおばあちゃん、そして、兄弟と、飾りの一つ一つの意味を知りながら楽しく作り上げていく...この姿こそが、家庭教育の原点のような気がしてならないのです。

 
  ある学校では、班ごとに協力して七夕飾りを作っていますが、指導した私に感想文が寄せられましたので、一部紹介します。
  「みんなで一つのものを作り上げた時の喜び。バンザイと飛び上がって、みんなで抱き合った」
  「今まで口をきいたこともない嫌いな人と同じ班になった。でも、七夕ができ上がる頃には、とても仲良しになることができた」

 
  「一番町のアーケードの下に、僕たちの七夕を飾った。自分たちの作ったものが、一番良く見えてとてもうれしかった」
  私は日本の伝統文化などを紹介する目的で開催されるヨーロッパでの「ジャパンウイーク」に、何度か参加しました。そして、さまざまな国で「七夕飾り教室」を開き、七夕を通して、いろいろな国の人々と語り合い、心のふれあいを深めることができました。フランス、イギリス、ドイツ、オランダ、スペイン...。
  どの国に行っても、和紙の美しさに好奇心を持たれました。

 
  私は、できるだけ着物姿で飾りの作り方を教えますが、フランスでは子どもたちが私の着物のそで袖を引っ張って、「マダム」などと呼びながら作り方の指導をさいそくします。そのあどけない表情を見て、美しいものに感動する心はどこの国も同じであることを感じたものです。
  作り方の説明もうまく伝わったかどうか不安でしたが、どの国の人たちも一生懸命作っていました。今でもその時かかわった人たち、子どもも含めて、クリスマスカードが私の手元に届きます。
  実は、外国に行く前が大変なのです。私はチーフインストラクタとして、まず、スタッフに七夕飾りの作り方を教えることから始めます。さらに、外国に持って行く七夕飾りの手直しなど、出発までのいろいろな準備は、たくさんの人たちのあたたかい協力があってこそのものと、感謝しています。
  仙台七夕祭りは、多くの人々の協力があって運営されています。七夕飾りを作る人たちはもちろんですが、祭りの企画運営をしている七夕祭協賛会の方々の大きなカ、前夜祭の花火大会に奔走してくださる青年会議所の方々、七夕パレードに参加して祭りを盛り上げてくれる市民の皆さん、そして、毎年、最良の竹を提供してくださる方……。
  仙台七夕祭りを見にこられた遠来の方々にも、このように祭りを支える力があってこその伝統であることを感じてもらえれば幸いです。

 
         H14 金賞
 七夕祭りは、飾り付けにこそ仙台独自のものがありますが、「七夕」そのものは、古くから日本に伝わってきている祭事です。豪華でなくてもよいから、家族で作った素朴な七夕飾りが、あちこちの家の軒先に飾られたらうれしい…そんな思いで、この小冊子の発刊に至りました。仙台伝統の七夕飾りの作り方を書いておりますので、ぜひ、お作りになって軒先を彩ってください。

  2001年 星祭りの日に

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