キクチ文具
七夕の不思議
         菊地節子
 不思議その1
  母から各種の七夕講習会の講師を引き継いだ頃のことです。七夕ゆかりの梶(かじ)の葉を、お話を聞いてくれる子供達に見せたいと思っていたら、梶の葉が庭の真ん中で、野鳥が運んでくれた種から実生(みしょう)で育っていたのです。梶の葉は紙が貴重だったいにしえの頃、七夕の宵に、この葉にしたためた和歌を交わすのに用いられました。七夕のお話し会にはそれ以来、梶の葉を摘み、七夕の古歌を綴って持参しています。
 不思議その2
  織姫のベガは青く輝き、彦星のアルタイルは黄白色、天の川の渡し守、ニ星の仲を取り持つかささぎにも似た白鳥座のデネブは白色、この三星が夏の大三角ですが、もう一星、南の地表近くに赤いアンタレスが、七夕の夜空に輝きます。
  この青、赤、黄、白、夜空の黒は基本色となる色で、混ぜ合わすことにより、数々の色が生まれます。乞巧奠(きっこうてん)で飾られる五色の布の順番でもあります。私も毎年手掛ける仙台七夕飾りの五色の吹き流しの基本色に、黒は紫にして取り入れているのです。
  そして又、織姫のベガは地球の歳差運動によって一万二千年後には北極星に替わって、天空の中心に位置します。織姫を中心に星空が廻る時が来るのです。

 
 不思議その3
  琴座は織姫の星座名ですが、名付けられた由来は、ギリシャ神話のオルフェウスのたて琴によります。琴の名手のオルフェウスが亡き妻に焦がれての黄泉(よみ)の国まで会いに行き、琴の音のすばらしさゆえ、妻の方を決して振り返らないという約束事とともに、連れ帰ることを許されますが、約束を破った為に叶(かな)わなかったというお話です。
  これは、日本の神話とも言えるの、古事記の伊邪那岐命(イザナギノミコト)が亡き妻の伊邪那美命(イザナミノミコト)を慕って、黄泉の国へ追って行く話と良く似ています。
 不思議その4
  潟Lクチはお陰様で創業五十年を越しましたが、その間仙台七夕の大竹飾りとアーケード下の小竹(子)飾りは、一年も欠かすことなく、手作りを飾り続けることが出来ました。
   私は母の作る七夕飾りを子供の頃から毎年見て育ち、二十数年前からは製作に取り組んでいますが、七夕との縁の深さを感じます。一番町四丁目で長年七夕を飾っている中、仙台開府四百年を迎え、余談ですが、四という数字がその他にもラッキナンバーとして、私にかかわっており、田の神の田という字と共に何故か緑があるのを感じている昨今です。

 
  ところで七夕の作り手として心掛けていることは、遠くから見物にいらした方々や、七夕を楽しみにいつも来られる地元の方々が喜んで下さる、七夕飾りの可能性の追求です。ハーブの香りが風にゆらぐ吹き流しから伝わる「香り七夕」。松竹梅亀鶴の水引で日本の伝統美を表した水引七夕。横糸をぬいて縦糸で涼やかさを表した「手織りのさおり七夕」等々。小さな工夫や新規性は、毎年飾りのどこかに加えるようにしています。
  また、いろいろな小学校に七夕のお話でお伺いした際は、いつも子供達が七つ飾りの意味などを熱心に覚えてくれますので、七夕の伝統が次世代に継承されていく喜びを感じます。

 
  仙台七夕祭りは、日本に七夕が伝来してから、千年以上もの時をつないで、今日まで伝えられています。千年経た新世紀の今も、この仙台の地で七夕祭りが毎年行なわれていることこそ、改めて考えると不思議です。
  そしてこのささやかな本が、七夕の心とともに七夕作りが伝承され続けることのお役に立てばと願ってやみません。

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